第4章 I miss you〜SJ〜
「潤くん…」
「…ちゃんと、間に合った?」
ドアに向いたままだった自分の気持ちを隠す様に笑って振り返ったら…
そのままギュッと抱き締められた。
「ごめん…翔さん、潤くんを待ってたのに」
「この鍵返しに来ただけだって」
「それだけじゃないって思うから…そんな顔してるんでしょ?」
ニノの言葉に自分の表情を見られたくなくて顔を逸らしたら、もう一度抱き締められた。
「潤くん…もし潤くんが俺を選んでくれるなら、俺ならそんな顔させないし…幸せに、するよ」
「…ありがとう、ニノ」
「言ったでしょ?翔さんを想っててもいいから…俺に、して?」
柔らかく笑ったニノの顔が…
笑顔なのに切なく見えて、そんな気持ちにさせているのが自分だって思うと苦しくて…
覚えのあるその感情に、ギュッと目を閉じた。
「そんな顔しないで?ごめんね、俺が潤くんを好きでも…俺は翔さんじゃないから、潤くんを幸せにできないよね」
「そんな事ない。ニノは、俺を幸せにしてくれたよ。側にいて…寄り添ってくれて…不安にさせないように、ちゃんと言葉にして…俺だけを見てくれて…俺だけを大切にしてくれて…」
言いながら、熱いものがこみ上げてきた。
そう…
それは全て、俺が翔君と付き合っていた時に抱いていた不安。
本当に、俺のことが好き?
本当に、俺が必要?
もっと、言葉にして欲しい。
もっと、側にいて欲しい。
もっと、俺だけを見て欲しい。
「だって…俺は…狡いから」
「ニノが…ズルい?」
「ずっと、見てたから…二人の事。だから、ね…どうすればいいかなんて…簡単に、分かっただけ。俺が俺で勝負してたら…どうだっただろうね」
呟く様にそう言って俺から体を離したニノはちょっと俯いてから、顔を上げて笑った。
「じゃあ、俺は、帰るね」
「帰る、の?」
「家に帰りたがってたのは、潤くんでしょ?」
そうだけど…
「今ここに残って、混乱してる潤くんの心につけ込むのは卑怯だと思うし。ゆっくり考えて…もう一回潤くんが自分の心と向き合って…それで出した答えが俺だったら…そしたら、ね…その時はまた、抱き締めさせて?」
いつもの笑顔で笑って出て行くニノを止める言葉はなくて…
ただ閉まったドアを、見つめ続けた。
俺の気持ちは…