第1章 愛の分岐点
「ねぇ、もうやめたら?」
「え?」
「あっ、間違えた。やめる必要はないけど、俺にしたら?」
そう言って楽しそうに笑ったニノの顔が近付いて来て…
唇が触れ、そしてその舌が中へと割り込んできて初めて、自分の身に何が起こったのかを悟った。
まるで
今日のお昼はお蕎麦をやめて、俺と同じハンバーグにしなよ
ぐらいの軽い言葉とノリで、俺たちの関係は始まったんだ。
「ねぇ…ここ?」
「んっっ」
「潤くん…好きだね、ここ」
嬉しそうに俺の好きな場所を突くニノは余裕の表情で…
「ニノ、も…感じろ、って…」
「んふふ、ちゃんと…感じてるよ?じゃなきゃ、こんな…ね…」
「んあぁっ」
自分の固くなったモノを俺に分からせる様に、奥まで一気に貫かれ、自分のものとは思えない甘い声が出て、羞恥に口を押さえると、ニノが笑って俺の手のひらへとキスをしてくる。
「大丈夫よ?当然、防音対策は、しっかりしてるから」
そんな風に言ったって、男の声で喘がれても、色気も何も無いし、気分も削がれるだろうから…
「俺は、聞きたいの…聞かせて…」
翔君との関係は…
始まった頃は互いに実家住みだったし、抱き合える場所は限られていて、大きな声なんて出せるわけもなく、ただひたすらに声を殺していたし…
それが許される状況になっても、この関係が公になる事を恐れる翔君は、俺が声を出す事を良しとしなかった。
それが身についてる俺としては
出していい
と言われても、そう簡単に出せるわけもなく…
「こんな甘い声で鳴いてくれる子…俺なら声を殺せ、なんて、言わないけどなぁ…」
「やっ…み、み…ダメだ、って…」
奥を突きながら、耳を甘噛みされて、息を吹き込まれ…
囁かれる言葉の意味も脳に届かずただ、快感だけが脳を支配する。
「ねっ…聞かせて…俺、潤くんの声…好きだよ」
耳に吹き込まれる甘い声。
まるで呪文の様に俺の心を溶かして、この行為を繰り返す度に、俺の全部がニノに塗り替えられていく。