第4章 I miss you〜SJ〜
「最近、ニノと仲良いの?」
他の三人が撮影に行って翔君と二人っきりの楽屋。
俺はスマホを弄り、翔君は新聞を読みながら時々メモを取ったりして…
それがいつもの事だったし、今日もそうだと思っていた。
だから突然話しかけられて楽屋には自分しかいないのに、それが自分への言葉とは思わず…
「なぁ、聞いてる?」
「……え?」
別れてから、仕事以外の話をする事もなくなったし…
プライベートの内容を聞かれる事もなかった。
「ニノと仲良いな」
「う、ん…仲は、いいと思う、けど…」
「ふーん」
自分で聞いたくせに気のない返事をして、翔君は再び新聞へと目を移した。
その質問の意図が何か聞きたいけど、でも聞ける雰囲気でもなくて…
でもやっぱり、こんな風に翔君の何気ない言葉に期待してしまう自分に、翔君に聞こえない様に小さくため息を吐いてスマホへと視線を戻す。
ニノは
やめなくていい
って言うけど…もうそろそろ翔君から卒業して、新しい道を歩きたい。
そう思うのに、こんな風に聞かれると、その裏に何かの想いがあるんじゃないかとか期待して…
そして、結局、忘れられない。
こんなんじゃ、忘れられるわけがない。
でも、こんな想いは不毛すぎるって分かっているから…
だからもう、新しい恋をしたいと…
翔君以外の誰かを見たいって、今は心から、思う。
そんな事をつらつらと考えていた時…
俺のスマホが着信の音を告げた。
誰からのメッセージか、何の気負いもせずに開けて…
「なぁ」
「終わったよ〜」
「あ〜早く帰って釣り行きてぇ」
「潤くん、お待たせ。次はセット変えてから五人で、だって」
フリーズした俺の思考に翔君の呼びかけが聞こえた瞬間、撮影を終えた三人がワイワイと楽屋に入ってきた。
真っ白な頭のまま何とかニノのセリフに頷くと、一瞬真顔になったニノが俺に近付いてきた。
「潤くんも今日これで終わりでしょ。うちおいでよ」
「えっと…」
「何か予定、あった?」
この間会った時に、この後ニノの家に行くって事は既に話していたし…
「いや、行けるよ」
「やった、じゃあハンバーグね!」
そんなやり取りをしながら、そっとスマホの画面を黒くした時…
大きな音を立てて新聞が畳まれる音が…した。