第2章 2番 始まりの1日
放課後。
もれ聞こえる、運動部の声。
紙を埋め尽くす、文字の羅列。
ふと顔をあげても、そこに人は自分しかいない。
私はこの時間帯の図書室が好きだ。
まるで、みんなとは違う空間。隔絶された場所。
そんな気がする。
少し昔の、文豪たちが作り出した世界。
そこに引き込まれていくかのような静寂が、心地良い。
だけれど最近、この聖域が、少しずつ変わってきている。
私にとっての安息の地は今や失われつつある。
その要因が今、私の目の前にいる。
今、たった今、目の前に颯爽と現れた彼こそ
邪悪の根源(私にとって)、倉石あきとだ。
「よぉ、元気か?百瀬」
無言でうなずく。人と話すことが得意じゃないので
こうする他ない。
「相変わらず、何も言わないなお前。」
そんなこと言われても、苦手なんだからしょうがない。
さっきまで一人しか居なかった図書室には二人の男女、
心地良かったはずの静けさは
気まずい沈黙へと変貌を遂げる。