第8章 *愛=嫉妬*
「ユイちゃ~ん!おーい!」
お茶子ちゃんに顔を覗き込まれてハッとする。
「どうしたん?体調悪い?」
「ううん、大丈夫」
「なら良いんやけど……あっ!二人が出てきたよ!」
再びモニターに目を向けると、大氷壁から出てくる二つの黒い影。二人が相澤先生の目に触れないように布を被って移動している。
こういう時に百ちゃんの個性はとても便利だ。どんな状況でも臨機応変に対応できる。
(なるほど……布を被って移動するれば相澤先生に見られることはない…けど…)
移動しにくいしあまり得策と言えないような気もする。
相澤先生もそれに気づき、あっという間に追いついてしまった。そして二人の頭部を拘束する。
でも、相澤先生の前で布がひらりと揺れ、出てきたのは拘束されているはずの百ちゃんだった。
出「上半身だけマネキンになってる…!」
相澤先生が咄嗟に後ろに下がった瞬間に、百ちゃんがあらかじめ用意していた細長い布のようなものを相澤先生に向けて発射する。
相沢先生がいつも首元に巻き付けて使っている布とよく似たものだ。
(これなら少しは錯乱できる!)
次に焦凍が炎を出して相澤先生の周りを炎で包み込む。
焦凍が炎を使っているのを実際に見るのは始めてだ。
確かに凄い個性…だけど、個性もさることながら
(かっっっっっこいい……)
画面にアップで映し出された焦凍の顔は普段では絶対に見れない顔。
焦凍に見入っていると、布が相澤先生を拘束し始めた。
茶「何あれ…!勝手に巻き付いた!」
「もしかして…形状記憶合金じゃないかなあれ」
茶「形状記憶合金?」
「形状記憶合金はね、熱を加えることで記憶させた元の形状に復元することが出来るの。だからぐるぐる巻きの状態が元の状態だとしたら、バラバラになってても熱を加えるとその状態に戻るんだよ」
私も家に閉じ込められて勉強漬けの毎日を送っていた時にならったくらいだが、それをここで使おうと考える百ちゃんはやっぱり凄い。
茶「そんな事まで考えるなんて…流石だね…」
「轟・八百万チーム条件達成!」
「あ、私次だ!」
「頑張ってね、お茶子ちゃん」
「うん!」
お茶子ちゃんに手を振って、私は焦凍が映し出されなくなるまで吸い込まれたように画面を見つめた。