第8章 *愛=嫉妬*
§ 轟side §
「轟さん、お疲れ様でした」
「お前のお陰で助かった」
「いえ…お力になれたなら嬉しいです。轟さんは次はユイさんの所へ?」
「そのつもりだ。セメントス先生の試合を見たがかなり強かったからな」
「頑張ってくださいね」
「あぁ。じゃあ俺はそろそろ行く」
実技試験後、ペアだった八百万と軽く反省会をして、急いでユイの元へと向かう。
(確か…モニタールームにいるって言ってたよな)
試合会場からそのままモニタールームに直行すると、目の前にじっとモニターを見つめる人影を見つけた。
「あ、轟くん!お疲れ様!」
「緑谷…お前爆豪と作戦会議しなくて良いのか。相手はオールマイトだろ」
「うーん…作戦会議してくれる感じじゃなくて…」
「確かにそうだな」
俺と緑谷の話し声に反応した人影がこちらに振り返る。
セミロングの髪の毛がさらりとなびき、マリンブルーの瞳が俺を捉える。
俺を見つめる大きな目が細められて、眉毛が下がっていく。
「お疲れ様、轟くん」
「…月城……?」
思わずユイと呼びそうになった。
笑っているのに…確かに目の前のユイは笑っているのに、いつもの笑顔じゃなかったからだ。
何かを押し殺して、困ったように笑っている。
「作戦会議、するぞ」
雄英に入るまでこんな顔したことなかった。
何がユイにこんな顔をさせているんだ。俺は作戦会議という名目でユイをモニタールームから連れ出す。
人気の無い所まで来たところでユイを優しく抱きしめた。
「何があった」
「何も…無い」
「嘘つけ」
「………」
私、焦凍の足手まといになりたくないな。焦凍に相応しい人になりたい。
「ユイ…?」
僅かな沈黙の後放たれた言葉。
口から白い息が出るようにフッと出てすぐに消えてしまう。
それでも、俺の心には消えずに残っていた。
俺の手を優しく振りほどき、ユイが手を握ってくる。