第8章 *愛=嫉妬*
焦凍達の試験会場は市街地のような演習場だった。
「轟・八百万チーム、演習試験レディゴー!」
試験が始まって、百ちゃんが体からマトリョーシカを出し始めた。
出「なるほど…!休むことなく個性を発動させていれば相沢先生が個性を使った時に直ぐに分かるんだ!」
個性が使えなくなるということは相澤先生が近くにいるという事。それが分かるだけでも結構デカい。
「あ、マトリョーシカで出なくなった」
百ちゃんが出し続けていたマトリョーシカは出なくなっているのに二人は何か話し込んでいて気付かない。
バッ…!と二人が振り返り、周囲を警戒し始める。
でも気付いた時にはもう遅い。
相澤先生が上空から奇襲をかけてきて、百ちゃんを庇った焦凍は吊るし上げられてしまった。
「八百万さんは何とか逃げたみたいだけど……ここからどう巻き返すかが問題だね」
「うん…」
何だか百ちゃんはさっきから暗い顔をしているように見える。
個性が消された時も、いくら話し込んでいたとは言えいつもの百ちゃんなら絶対に気付く。
ずっと焦凍の指示に従って動いているようで、自分の意志で動けていないようにも見える。
その間にも相澤先生は物凄い速さで百ちゃんの元へと向かって走っていく。
(おもりついてるのに速っ……こんなの絶対に逃げきれない)
相沢先生に追いかけられながらもなんとか百ちゃんが焦凍の元へ戻って来る。
でも百ちゃんはその場から動かない。
「どうしたんやろ…後ろから相澤先生来てるのに…」
焦凍がそれに気づいて百ちゃんに話かける。
会話の内容は分からないけど、百ちゃんの顔が少し明るくなった。
「ヤバい!相澤先生来とるよ…!」
百ちゃんが咄嗟にマトリョーシカを相澤先生に投げつけるが、それは簡単に払いのけられてしまう。
と、次の瞬間相澤先生を光が包み込んだ。
出「あのマトリョーシカ、閃光弾になってる…!」
閃光弾の光で相澤先生の視界が遮断され、その隙に焦凍を地上に下ろす百ちゃん。
今度は百ちゃんが先導する形で走り、相澤先生が瞬きをする一瞬、ほんの僅かな時間で焦凍は大氷壁を作り上げた。