第7章 *嫉妬=熱*
§ ユイside §
(轟くんまだかな……)
空になったすだれの上に箸を置いて目線を携帯に移す。
ホーム画面に写されたLINEの通知。
そこには「分かりました。お帰りの際は連絡していただければお迎えに行きますので楽しんできてくださいね!」と書かれている。スウさんに帰りが遅くなると連絡した返事だ。
「ありがとうございます…っと」
軽く返事を済ませたところで轟くんが帰ってきた。
「悪い。待たせた」
「ううん、大丈夫」
「それじゃ、行くか」
「うん」
私の手を掴んで早足で歩きだす轟くん。私は轟くんに引っ張られる形で少し後ろを歩いた。
「轟くん…もしかして時間ヤバい?」
「いや、俺の心が限界なだけだ」
さっきから私が悪いと言ったり限界だと言ったりどうしたんだろう。
こんな様子の彼を見るのは初めてなので、私が何かしてしまったんじゃないかと心配になってきた。それともどこかに頭をぶつけたのか。
「お前、自分が可愛いって自覚あるか?」
「はぁ…?」
歩く速度も緩めず、こちらも向かずに聞いてくる轟くん。
いまどんな顔をしているんだろう。顔は見えないけどいつもとそんなに変わらないんだろう。
(やっぱり頭打ったんじゃないかな…)
頭の中に浮かび上がるのは幾つものクエスチョンマークだけ。何でこんな事を言い出したのか予想もつかない。
「自覚してないなら今すぐ自覚しろ」
「…なんで」
さっきから轟くんの言ったことへの私の返答は疑問形ばっかり。だって本当に何を言ってるか分からないから。
前を歩く轟くんが急に足を止め、振り返る。
そして一言。
「お前が可愛すぎるから早く帰って可愛がりたい。だから急いで帰るぞ。今日は帰す気無いからな」
「なっ……」
聞かなければ良かった。この一言で私は体温が急上昇。心拍数加速。一言で言うとドキドキが止まらなくなってしまい轟くんのお家に着くまで殆ど喋れなくなってしまうのだから。