第7章 *嫉妬=熱*
雄英高校から徒歩五分の場所にある最寄り駅から一駅、辿り着いたショッピングモールでユイは子供のようにはしゃいだ。
普段このような体験をすることがないせいか服の裾を引っ張りながら進む姿は実に可愛い。今後デートする度にこんな事されるものなら心臓が持つか心配だ。
「ねえ、轟くん!このブレスレット可愛いと思わない?」
「これか?」
ユイが指を指したのは小さな雑貨屋にあった青と白のセットブレスレット。
「お前に似合いそう」
「本当に?」
「嘘はつかねぇ」
天然石で出来ているようなブレスレットは2人の"個性"に似て透き通った綺麗な色をしていた。
「ありがとう。だけど今度にしようかな…もうちょっと迷ってたいから」
「そうか。じゃあそろそろ夕ご飯にするか?」
「うん」
「あっ!ちょうどお蕎麦あるんだね。あれにしない?」
「俺も言おうと思ってた」
何とか空いている席を見つけて2人でザル蕎麦を食べる。
付き合って初めてのデートが蕎麦なんてムードが台無しだと言われるかもしれないが俺は食事にまでムードを求めていない。
「ユイ、ここ来るの初めてなのか?」
そう、空気を読まずにこんな事を聞いてしまう俺にムードを求めてはいけないのだ。
「初めてだけど…どうしたの?」
残り半分ほどになった蕎麦を食べ進めようとしたユイの箸が止まる。
「今まで見た中で1番笑ってた」
「はしゃいでた」と言ったら少し気にして静かになってしまうかもしれないから言わなかった。はしゃいでいるのをもう少し見ていたい。
「そうかな…?轟くんと出掛けられたから嬉しかったのかも」
真顔でそれを言うか。不意打ちとはまさにこの事だ。
「私ね、今まで男の子とこうやってゆっくり話すこともなかったから彼氏がいた事も無いんだ。だから轟くんと一緒の気持ちってだけで嬉しいよ」
(あぁ、ダメだ)
我慢ができそうにない。早く触れたい。俺にだって節操はある。でも早くユイを感じたいと思う気持ちをこれ以上止められそうになかった。
「今のは完全にお前が悪い」
「ん?」
「ちょっと電話してくる。ちょっと待っててくれ」
「うん…」
俺は残った用事だけ済まそうと急いで席を立った。