第7章 *嫉妬=熱*
§ 轟side §
茜色に染まった空の下、学校の近くにあるカフェでコーヒーカップにため息を一つ零す。
と、俺の前に一つの影が落ちた。
「ごめんね、待った?」
俺のため息の原因であるユイだ。
「いや、大丈夫だ」
カフェを出て帰り道を歩く。
「遅くなってごめんね。編入の話で先生の所に行かないといけないから先に帰ってていいってLINEで言ったのに…」
「それなら別に問題ないって俺も言った」
二人で歩いているだけなのに、学校よりもずっと距離が近く感じて、学校での距離感が虚しく感じる。
「ユイ、今日俺の家に来れるか?」
「急にどうして?」
「言いたいことが沢山ある」
(主に男への警戒心の無さについてだけどな)
「…分かった」
「ん。その前に飯も食う」
「轟くんと夕ご飯食べるの初めてだね。何が好きなの?」
「冷たい蕎麦」
「私も好き!暑い時に食べると最高だよね!」
学校では緊張もあってか、ほぼ変わらなかった表情が俺の前ではコロコロ変わる。それが心を許している証拠だといいな、とらしくもない事を考えた。
「つってもまだ夕飯の時間には早ぇな。どっか行くか。お前ほとんど自分でここら辺歩いた事ねぇだろ」
「本当?行きたい!」
と言っては見たものの俺は特に女子が好んでいくような洒落た店を知っている訳でもない。休日に友達と遊びに行くこともない。
出掛ける場所と言って思いつくのは近くにある大型ショッピングモールくらいだった。それでも暇つぶしには丁度いいだろう。ファストフードコーナには蕎麦もある。夕飯もそこで済ませてしまえばいい。
「電車で一駅だ。行くぞ」
「うん!」
「お手伝いさんにも連絡しとけよ」
「轟くんがお手伝いさんなんて言うと変な感じがするね」
「そうか?」
「うん、そう」
隣でクスクスと笑うユイ。
「つないでいないと迷子になるから」と言い訳をしてユイの手を握り、駅へ向かった。