第6章 *雄英*
「てめえ何だあの個性半分野郎と同じかよ!」
「ちょっと違うよ。氷と冷気を出せる個性」
「一緒だボケ!ぜってぇ負けねぇ!クソが!」
(ボケ……)
誰に対してもあんな感じだとは言ってたけど彼友達いるのだろうか。普通に心配だ。
3組目も全員準備を済ませて、スタートと同時に駆け出した。
(凄い!浮いてる!)
お茶子ちゃんが自分を浮かせて工業地帯の上を進んでいく。
それに対し、爆豪くんは爆破で自分の体を飛ばして進んでいた。
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「おめでとう!体育祭での屈辱を少し晴らせたかな?」
「あああ!クッソがあああ!」BOM!
3組目のレースを終えた後モニターに映し出されたのはニコニコしながら「助けてくれてありがとう」と書かれたタスキを掛ける茶髪の女の子と、その隣で叫びながら上空に向かって爆破を繰り返している金髪のツンツン頭。
あのレース、爆豪くんは「建物への被害は最小限に」というオールマイトの言いつけを守っていつもの力を発揮できなかったらしく、2位。トップはお茶子ちゃんだった。
切「まあまあ!個性的にも今回は麗日の方が有利だったって!」
上「建物に被害を加えなかったんだからしょうがないって!だから落ち着け!」
切島くんと上鳴くんが止めに入るけど爆豪くんは聞く耳を持たない。
(でも密集地帯で物への被害を出さずにあの個性を使うこと自体相当難しいことだと思うし仕方ないとは思うけどな…)
彼の良い所はどんなにしょうがないと言われようとも絶対的な勝利を望むとこだと思う。つまりは言い訳をしないという事。
「君はしっかりとルールは守った!偉いぞ爆豪少年!では最後の組に行ってみよう!」
最後は峰田くん、透ちゃん、梅雨ちゃん、口田くん、そして轟くんだ。
(楽しみ…頑張って、轟くん)
心の中でそう呟いた時、耳元で誰の声が聞こえた。
声の主はスタート地点に向かおうとして私の横を通り過ぎた轟くん。
「今日帰り送るから。校門前のカフェで待ってる」
「あ…別に…」
大丈夫だよ、と言おうとしたけど、轟くんはそのまま歩いて行ってしまう。
(これは拒否権が無い無言の圧力…?)