第6章 *雄英*
(うわ…凄い、緑谷くんだ)
見るからに進みにくそうな道を飛んだり跳ねたりして軽快に進んでいく緑谷くん。
そういえばトップ予想の時に緑谷くんだけは名前が上がらなかった。こんなにすごい個性を持っているのに、何故だろう。
でも、これに驚いているのは私だけじゃなくてクラスのみんなも同じだった。「この動きはなんだ?!」とザワついている。
「言われてみりゃ…何だあの動き」
轟くんも眉間にシワを寄せて興味深そうに緑谷くんを見つめている。
耳「なんかあの動き…」
八「私も思いました、似ていますね」
(似てる?誰に…)
最初は誰の事か分からなかったけど、モニターの前で悔しそうに手を握る爆豪くんを見て、何となく察した。
(これで行けばもしかしたら緑谷くんが一ば──
「あ」
一番になるかも。そう思った時、緑谷くんは私の視界から一気に消えた。
────────
「フィニーッシュ!ありがとう!そしておめでとう!」
結局瀬呂が1位だった。
途中まで1位になるかもと思って緑谷くんは足を滑らせて失格。
「よし!じゃあ次に行くぞ!」
次は切島くん、上鳴くん、響香ちゃん、常闇くん、青山くん、そして私だ。
(この中だとだれが機動力が良いんだろう…とりあえず頑張ろう)
「このチームは6人でやってもらうぞ!ではSTART!!」
オールマイト声を聞いて、私はまず地面に氷を張ってその上を滑った。
「轟と同じ?!ずりー!クソ強ぇ!」
斜め後ろから切島くんの声が聞こえる。
(そっか…轟くんと個性似てるもんね、私)
何気なく言った一言だったとは思うけど、轟くんと私のつながりがあるようで嬉しかった。
「おお…」
少し前を行く常闇くんは黒い物体と一心同体といった感じでまるで忍者のように進んでいく。
青山くんもお腹からレーザーを出して軽快に進んでいた。
響香ちゃん上鳴くん切島くんも個性こそこのレースに向いてはいないものの、遅れを取ることもない。
私も除籍がかかってるから頑張らないと、と氷の上を滑りながらこのエリア内で一番高い建物を探した。