第6章 *雄英*
§ ユイside §
(転校なんて初めてだから緊張する…)
雄英高校に登校した私は職員室で先生との顔合わせを終えて教室の外で教室に入るタイミングを待っていた。
教室には入っていないと言えど私と1Aの教室を隔てているものは壁一枚。声は聞こえる。
「はあ?!雄英に転校生?!ふざけんな出来るわけねぇだろうが!」
(これはまた…顔を見なくても分かる…体育祭で凄かった人だ…いろんな意味で)
私の1年A組に対する情報は雄英体育祭だけ。
その時はまさかここに来るとは思っていなかったので印象に残った人しか覚えていない。
(でも当然のリアクションだよね。自分たちが死ぬ気で勉強して死ぬ気で努力して入った雄英に急に入って来るんだもん)
「そこまですげえ奴なのかよ…どんな個性なんですか?先生!」
壁の向こうからはまた違う人の声が聞こえてくる。
「いや、俺もまだ見ていない。校長から転入生が来ると話を聞いただけだ。だから俺も含めて林間合宿で実力を見る。ダメだったらすぐに除籍、ヒーローに相応しいと判断したら除籍しない。それだけの話だ」
(うん、先生もかなりキッパリ言っちゃうんだね)
私に聞こえていると分かっているはずなのに【除籍】という言葉をサラッと使ってしまう辺り、凄い。
とりあえずは除籍されないように頑張ろう。そう決意を固めた時、相澤先生からお呼びがかかり、小さく深呼吸をしてから教室に足を踏み入れた。
──ガラッ。
「え?」
先程の騒がしさは何処へやら。私を見た皆は戸惑いの表情を浮かべていた。
「自己紹介を」
「あ…はい、月城ユイです。よろしくお願いします」
「窓側の席の間隔を少し詰めて一人分席を増やしてある。あそこに座れ」
「はい」
用意されたのは奇跡的に彼の隣だった。
今すぐにでも助けを求めたい気持ちを抑えて早足で席に着くけれど、誰も話しかけてくるわけでもなく、チラチラと私を見てくるだけ。
(え…まだ自己紹介しかしてないよね?もう嫌われた?やっぱり転入生なんて許せないかな…)
みんなの視線を一気に集めながら、これから始まる高校生活に色々な不安を寄せていた私だったが、その心配は相澤先生教室から出た瞬間に消え失せた。
ドドドドッ!