第6章 *雄英*
「そこまですげえ奴なのかよ…どんな個性なんですか?先生!」
「いや、俺もまだ見ていない。校長から転入生が来ると話を聞いただけだ。だから俺も含めて林間合宿で実力を見る。ダメだったらすぐに除籍、ヒーローに相応しいと判断したら除籍しない。それだけの話だ」
(担任が生徒の実力を知らないなんてあんだな…まあダメだったら本当にすぐ除籍されるんだろうな…)
「時間もないから話を進めるぞ。入れ」
先生が扉を開けて誰かに合図を送る。
女子とは言われたが校長も認める人材だ。見た目も派手だったり強そうなんだろうな…と思い扉の向こうを見つめる。
だが
「え?」
思わず戸惑いの声が漏れる。
その声はクラスメイトとシンクロして何倍にも大きな声となっていた。
遠慮がちに教室に入ってきた女の子は、俺のイメージとは正反対。
こう言うと失礼かもしれないが、特別強そうな訳でもないし爆豪のように自信家という訳でも無さそうだ。
A組それぞれ思った事は違うだろう。
(俺にも遂に青春が!!!!来た!)
俺がまず最初に思ったのはそれだった。
真っ白な肌に俺好みの顔!
そう!これは!
一目惚れだぁぁぁぁ!!
俺の高校生活の華となってくれる存在が現れた。
先程の悲痛な叫びを神様が聞いてくれたのだろうか。
神頼みは滅多にしないし神様をそこまで信じている訳でもないが、この時ばかりは神に感謝した。
「月城ユイです。よろしくお願いします」
(ユイちゃんかぁ……)
透き通った声も俺の心を鷲掴みにする。まあどんな声でも鷲掴みにされただろうけど。
「窓側の席の間隔を少し詰めて一人分席を増やしてある。あそこに座れ」
「はい」
言われてみれば誰も気付かなかったが窓側の席がひとつ増えていて一番後ろが空いている。
「SHRは以上だ。爆豪以外は心配してないがヒーロー志望が間違っても罵声を浴びせたりするなよ、仲良くしろ」
気だるそうにした相澤先生が教室を出ていく。
扉が閉まったのを合図に、皆一斉にユイちゃんの机を囲みこんだ。