第4章 *必然的個性*
「一番言いたいことを言ってないから」
「何だ…?」
「私のお父さんも、私に恋人が出来たって知ったら色々嗅ぎまわると思う。迷惑もかけると思う。それでも良ければ、私と…その…付き合って欲しい、です…」
「今更だな」
ユイの話を聞いてから俺の気持ちが変わるなんてことは無い。
「俺はお前が好きだ。返事はこれでいいよな?」
「っ…うん…私も」
まだ不安はある。でも、今くらい幸せな気持ちになっても良いだろ。ユイの腰に手を回した時、隣に置いていた携帯が小刻みに震えた。
緑谷からだ。
「もしもし」
「あっ、轟くん?ごめん、警察の人が来てて話がしたいから部屋に戻ってほしいって」
「分かった、すぐ行く」
電話を切ってからユイのおでこに軽いキスをする。
(本当は今すぐにでも全部奪いたいが…)
「警察が来てるから戻ってこいって連絡があった。続きはまた今度な。行くぞ」
先に歩き出すと、ユイは何を言うわけでも無く無言で服の裾を捕まえて俺の後ろをついてきた。
(多分、今顔真っ赤なんだろうな)
見えない顔がどんな表情なのかを考えながらそれぞれの部屋に戻ると、二人のヒーローと一人の警察が俺を待っていた。
2人のヒーローは飯田のインターン先のマニュアルさんと緑谷のインターン先のグラントリノさんらしい。
マニュアル「全員揃ったね。じゃあ話を始めるよ。こちら保須警察署署長の面構犬嗣さんだ」
面構「掛けたままで結構だワン」
(面…構……完全に犬じゃねぇか……)
俺達の戸惑いを知らずに面構署長は話を続ける。
面構「逮捕したヒーロー殺しだが、火傷に骨折となかなか重傷で現在厳戒態勢のもと治療中だワン。雄英生徒ならわかっていると思うが超常黎明期、警察は統率と規格を重要視し個性を武に用いない事とした。そしてヒーローはその穴を埋める形で台頭してきた職業だワン」