第4章 *必然的個性*
「私もね、生まれた時からヒーローになる未来が決められてたの。お父さんはヒーローになりたくて、個性も強かったけどヒーローにはなれなかった。何故かは分からないけど挫折してしまったらしいの」
だからね…
私のお父さんも個性婚をしたんだ。
「な…ッ…お前も…」
「そうだよ。轟くんと一緒。私はヒーローになってお父さんの夢を叶える為だけに作られた子なの」
ユイの口から放たれた言葉。
俺と同じ境遇だということを示す言葉。
だけど俺を慰めるために嘘をついているとは思えない。
「お父さんは雄英高校に通ってたの。でもその挫折ってのがあって卒業後ヒーローにはならなかったらしい。その代わり、国内トップの西大に進学して自分の会社を立ち上げて、ヒーローとは違う形で人生の勝ち組になったの」
そういえば月城グループとかいう会社を聞いたことがある。かなりの大企業で、社長は雄英卒だとか何とかでテレビで特集を組まれていたのを見たことがあった。
「お父さんはその権力と人脈を使って自分に合う個性を持つ女性を見つけて個性婚をしたって聞いた。本人からじゃなくてお手伝いさんから聞いた話だけどね。それでお母さんは体が弱いのに私を産んだの」
「ユイ…」
自分のせいで母親が死んだと言っているように聞こえる。
「お前は悪くねぇぞ。何も、悪くない」
「小さい頃からずっとお前の体が弱いせいでせっかくの個性も意味が無いってお父さんは言ってた…お母さんは無理して私を産んだのに…私はその個性すら使いこなせなくて…っ…」
「ああ、お前は頑張ってる。大丈夫だ。泣くのを我慢しなくてもいい」
体を引き寄せて背中をそっと撫でると、ユイは「まだ泣かない」といって体を離した。