第4章 *必然的個性*
§ 轟side §
俺が個性婚だと知らせた途端に顔を青くするユイ。
個性婚は今はほとんど行われていないが、俺達と同じ年代の人ならギリギリ知っているだろう。
「ユイ…大丈夫か…?」
「うっ…うん、大丈夫だよ。続けて」
ユイの顔がどんどん暗くなっていくのが少し心配だったが、いずれ話さなければならないこと。俺はこのまま話を続けた。
「俺の母親はエンデヴァーに個性婚をさせられてオールマイトを超えるためのヒーローを作る為に子を産んだ。兄弟は失敗作だと言われ俺が最高傑作。幼い頃からヒーローになる為の訓練を受けてたんだ」
「うん…」
「お母さんはいつも俺をクソ親父から庇ってくれた。でも、ある日お母さんが俺の左が憎い、育てられないと言っている姿を俺は見つけちまったんだ。で、その時お母さんに声を掛けてしまった俺は煮え湯をかけられた。これはその時の傷だ」
自分で自分の左目付近の火傷に触れる。
「轟くんは…お母さんを憎んでるの…?」
(憎んでる…か。普通に考えたら憎悪の対象になるんだろうな)
「憎んでない。お母さんがこんなになったのはあのクソ親父のせいだ。クソ親父は憎いがお母さんは全く憎んでない」
「そう…」
話を聞きながらユイは自分の事のように悲しい顔をした。泣くのを我慢していた。
「そんな顔するな。昔の事だ。それに、病院にいるお母さんに少し前に会って来たんだ。俺を許してくれた。だから気にするな」
ユイの頭を優しく撫でるとユイは静かに頷いた。
そして、ここからが本題中の本題。
「クソ親父は俺に恋人ができたら必ず探る。直接何か言われるかもしれない。それでも良いと言ってくれるなら…改めて、俺と付き合って欲しい」
「……っ…」
ユイにちゃんと告白がしたかった。それが今日ユイをここに連れてきた目的だ。
ユイは少し顔を赤くした後、俺の目を見つめて言った。
「勿論…だよ…。でもね、その前に私の家の事を聞いてもらってもいいかな…?」
「分かった」
直接好きだと言ってもらえたわけじゃねぇがユイからの返事はもらえた。それがどうしようもなく嬉しい。
口角が上がりそうになるのを抑えてユイの言葉を待つ。