第4章 *必然的個性*
手を引かれて連れていかれたのは病院の屋上庭園だった。赤や紫の綺麗な花が咲く誇っている。
全く人がいないわけではないけれど、朝早くということもあってかあまり人はいない。
轟くんはその中でも人気が無い所のベンチへ腰を下ろした。
私もその横に腰を下ろす。
「あの時は黙ってたが…昨日、なんで俺がヴィランを凍らせたことを隠したんだ」
ベンチに腰を下ろした後、すぐに轟くんがそう尋ねてきた。
「どうしてって…私を守ろうとしてやってくれたことなのに迷惑かけたくなかったからだよ。私がヴィランを凍らせたことは事実だし、これが最初じゃないから良いかなって」
轟くんははぁ…とため息をつく。
「ここでまた何か言って面倒になるのは避けたいから何も言わねぇが…俺は納得してないからな」
「分かってるよ。ありがとう。で、何か話があったんじゃないの?」
まさかこれを聞くためだけにこんな朝に連れ出したわけじゃないだろう。しかもわざと人がいない所を選んでる。
轟くんは一呼吸おいてから私に向き直る。
「あぁ…俺の、両親についてだ」
「轟くんのご両親…?」
「俺の父親がエンデヴァーだってことは前に少し話しただろ?」
「うん」
私はあんまりヒーローには詳しくないけどそれでも知ってる。雄英体育祭の時もすっごく轟くんの名前を大声で呼んでた。
「俺はあいつの出来なかったことを成すためだけに作られた子だ」
「どういうこと…?」
(エンデヴァーの出来なかったこと…)
「あいつは万年2位で1位のオールマイトにはどうしても勝てなかった。だからアイツを超えれるような個性を持ってる子供を作ろうとしたんだ」
「どう…やって…?」
正直、聞かなくても答えは分かっていたのだ。
強い個性を作るためには強い個性と強い個性を合わせればいい。でも、聞きたくなかった。
「俺は個性婚ってやつで生まれた。愛のない、個性の為だけに生まれた子供なんだ」
自分が一番分かっていたから。