第4章 *必然的個性*
§ 轟side §
「月城、遅くなって悪りぃ」
月城の元へと戻ると、月城は泣きそうな瞳で俺を見つめてきた。
「無茶しないでって言ったのに……っ…」
「無茶なんてしてない」
「私の為に危険な事しないで…」
「好きだから問題ないって言ったろ」
「……っ」
きっと俺が気持ちを伝えればクソ親父の耳に届くこともあるかもしれない。なんて事を思っていたが、一度口にしてしまえばそんなことはどうでも良くなってくる。
「ここには俺とお前しかいない。強がらなくていい。怖かっただろ?」
月城の体を抱きしめると、月城は安心したのか俺の腕の中で静かに泣いた。
「こわ…かった…」
「ああ、怖かったよな。もう大丈夫だ。ゆっくり息を吐け」
月城の体が元の体温を取り戻し、そっと体が離される。
「さっき言ったこと…本当?」
「さっき…?」
「その…私の事……好き…って…」
その二文字を確認するだけで顔を真っ赤にする月城。
さっきまで泣いてたくせに次は真っ赤になっている。良く表情が変わる奴だ。
「本当だ。別に返事が欲しい訳じゃない…いつか、聞ければ」
ここまで言ったにも関わらず俺は返事を聞くのが怖くなっているのだろうか…少し引き気味になってしまう。
その言葉を聞いた月城は顔を俯かせて呟いた。
「好きに…なっていいの…?人に助けてもらってばっかりで個性も使いこないせない…役にも立たないし…それに…」
怒ってる月城も笑ってる月城も可愛いと思うが自分を責めてる時の顔はあまり見たくない。
こいつも何かしらの事情を抱えてるんだろう。でもこれだけは言える。
「月城、お前はお前だ。個性だけで世界が決まるわけじゃないし何もかも全部一人で出来る人間なんていない。好きな人を好きになっていい。なりたい自分に、なれ」
俺が偉そうに言えた立場じゃねぇが気付いたら口から出てた。
すると、月城は止まったはずの涙を再び流して言ってくれた。
「私…轟くんが好き……」