第4章 *必然的個性*
「でもまぁ相手は子供だしなぁ…10秒時間をやるよ。それで逃げられなかったら皆殺しだ」
大通り側にはヴィランが立っているから通れない。私たちが逃げられないことをわかっていて言っている。
心「私…は…無理…二人で…」
「それは無理だよ。私たちがどんなに逃げてもヴィランからは逃げられない」
この場面では「一人だけ置いていけない」なんて言葉をかけるより事実を言ったほうが良いだろう。
「それじゃあカウントを始める」
10──
時間がない。どうすれば……
私が頭を悩ませていた時、ユウちゃんが震えた声で私に言った。
9──
「ユイ……同じ年の子で…しかもヒーロー科でもプロヒーローでもないユイにこんなこと言うのは間違ってるかもしれない…でも…」
助けて、ユイ
「っ………」
8──
それは、私の頭の中にも一応あった考え。私の個性でヴィランを倒すことだ。
でも、今人を凍らせるくらいの氷を出そうとすれば確実に個性が制御できない。
7──
ユウちゃんは必死に泣くのを我慢しながら心ちゃんの止血処置をしている。
つい二日前に聞いたのだ。
ユウちゃんの夢はお医者様だと。
「私は無個性だからヒーローになって人を救うことは出来ない……だけどね、いつか役に立つかもって思って体は鍛えてるの!それに個性が全てじゃないでしょ?医者になればヒーローとはちょっと違うけど人を助けられる。だから私は無個性であることに後ろめたさは感じてないよ」
そう、言ってた。
6──
私が今何もしなかったらユウちゃんはきっと無個性だったことを後悔する。それなら──────
5──
「ユウちゃん!一緒に心ちゃんをトンネルの外まで運んで!」
「でも…」
「大丈夫!いいから!」
「分かった!」
急いで心ちゃんをトンネルの外まで運ぶ。
「そうだ…必死で逃げてくれないと時間をあげた意味が無くなるよなぁ……」
心底楽しそうに笑うヴィラン。