第4章 *必然的個性*
どれくらい時間が経ったのだろうか。
もうヴィランが暴れまわっているような感じはしない。
少し外に出てみると、私たちを襲ったヴィランの姿は確認できなかった。
(ここから見てた限り見たことのないヴィランが三体いた。どれも大きかったからもしまだ暴れまわっていたら絶対に分かるはず)
「多分もう大丈夫だよ。大通りに出たらプロヒーローもいると思う」
ユウ「じゃあ早くヒーローの所に行こう…!」
早足で細道を抜けると、そこはまるで別の街のようだった。
建物は破壊され、その欠片が至る所に落ちている。
でもここはまだ人通りが少ない所だ。一体保須市の中心部はどうなっているのか。
今は一刻も早く人通りの多い所に行くのが先決だ。
心「急いで来た道を戻ろう!」
「うんっ…!」
心ちゃんが走り出し、私とユウちゃんもそれに続いて走りだした。
ユウ「あと少しで大通りに出るよ…!」
大通りへと続くトンネルが見えてきて、やっと少し安心する。
でも、その安心も束の間、一番前を走っていた心ちゃんが、トンネルの中に入った瞬間、急に倒れた。
「心ちゃん…⁈」「心!」
駆け寄ってみると、心ちゃんは言葉にならない叫び声をあげて腕を必死に庇っていた。
そして、その腕からは血が止めどなく流れている。
そして私が行く先にナイフを持った黒い影。
…違う。指がナイフになっている。そういう個性だ。
「今日はうるせえなぁ……俺の縄張りを通らないでくれる?」
私たちがこんなに恐怖に怯えてるとは対照的に気楽な声。
「ヴィ…ラン……」
そうだ。忘れていた。今この街にいるヴィランがあの三体だけだなんて誰が言ったんだ。
保須市を拠点にしてる他のヴィランがいてもおかしくない。
「子供でも何でもここは俺の場所だ。足を踏み入れちまった以上死んでもらう」
逃げられない……こちらは一人怪我を負って自分では歩けない人がいる。どうやったって逃げられない。