第4章 *必然的個性*
ユウ「何⁈」
爆発音のようなものが鳴り響き、その直後に地響きが起きた。
急いで店の外へと出てみると
「何、あれ……」
まるで、脳が剥き出しになっているような、見たこともないヴィランが暴れまわっていた。
一瞬思考が停止する。ヴィランはよくテレビやニュースでも目にする存在だが、まるで自分が襲われるなんてこと思っても見なかったからだ。
いや…それも違う。自分が襲われているのではなく、この地域一帯…それこそ"保須市全体"が襲われているような感じだ。
心「やばいよ!早く逃げよう…!」
「うん……っ…」
ヴィランから逃げようと反対方向へと走るけど、そこには飛行型の別のヴィラン。
どこにも逃げ道がなく、他の人達も左に逃げる者もいれば右に逃げる者もいる。
パニック状態だ。
「とにかく隠れられる場所に…!」
何とか頭を冷静に保ち、細道へと身を潜める。
ここからでも見てわかるくらいヴィランの力が圧倒的だ。
今闇雲にプロヒーローの元へ助けを求めに行っても安全ではいられないだろう。
(あのヴィランは体が大きい。だったら細道に身を隠してたほうが見つかるリスクは少ないはず)
それに、実を言うと先程から個性が暴走しないように制御するので精一杯なのだ。
ユウ「どうしよう……携帯も電波が通じない…」
心「大丈夫だよ、落ち着いて。時間がたてばプロヒーローが何とかしてくれるから」
ユウ「うん……」
ユウちゃんを落ち着かせるように肩を抱く心ちゃん。
大丈夫という声は震えていたけど、今は一人ではないことが何より心の支えになる。
心「熱っ……!」
「待ってて、冷やすから」
心「ありがとう……」
時々、燃え広がっている炎のせいで熱風が吹くけど、それは私の個性で冷気を出してなんとかできた。
涼しいと感じるくらいの冷気なら暴走の心配はない。
私達はそのまま騒ぎが収まるのをじっと待った。