第1章 *プロローグ*
体育祭が終わり、休む間もなくやってきた職場体験。
俺は一日目を終えて帰路についていた。
(今日もクソ親父がクソだったな)
一日ずっとあいつの隣にいるのはイライラの連続で、ほとんど会話も交わさなかった。
万年2位だがそれでも2位。それなりにプロヒーローとしての仕事はやってるようだったが俺からすればヒーローだろうが何だろうがただのクソ親父だ。
一段とイライラしながら歩いている俺の右側からはパリパリと氷が張って
いや……
(この氷は、俺じゃねぇ)
俺の右手からも右足からも冷気は出てねぇ。
足元に俺ではない誰かの"個性"で氷が張り巡らされている。
それだけじゃない………
(冷たすぎねぇか…?)
俺の足元に張っているだけの氷は、異常な冷たさを放っている。自分の個性でさえこんな冷気は出ない。
囲まれているわけでもないのに真冬のような寒さに襲われるくらいだ。この冷気を出してる奴は果たして正気なのだろうか。
ヴィラン連合の襲撃かと思ったが、街はいつも通り平穏だし地面に張ってる氷も何をしてくるわけでもない。
ということは………?
俺は咄嗟に氷の出どころへと目を向けて、それを道しるべに細い裏路地へと入っていった。