第1章 *プロローグ*
(っ……寒いな………)
段々冷たくなっていく空気とともにうっすらと人の気配がする。だが誰かが戦っているような音もしない。
恐らくこの先が行き止まりだ。
これはただ個性を持て余している奴がふざけて遊んでいるか
——————戦闘がすでに終わって決着がついているかのどっちかだ。
雄英の教師でもあるプロヒーローに連絡をしてから様子を見に行くべきだろうか。
だがヴィランが人を殺しておいてその場にずっととどまっているとも考えにくい。
それともここに新しい"獲物"が来るのを待っている…?
もしもただの悪戯だった場合はプロヒーローの時間を割くことにもなる。ヴィラン連合も現れて何かと忙しいプロヒーローの手を煩わせるわけにはいかない。
どれが最善の策なのか必死に考えていた俺だったが、次の瞬間そんなのも忘れて路地の奥へと駆け出した。
「誰か………助…け………」
俺の助けを求める、今にも消え入りそうな声が聞こえたから。