第3章 *絶対零度*
「なんで………」
「お前高校になるまで殆ど自分で道歩いたこと無いんだろ。一応地図は送ったがもしかしたら迷ってるかもしれねぇと思ったから迎えに来た」
「私がもし迷ってなかったらどうするつもりだったの…?」
「その時は来た道を引き返せばいいだけだろ」
「ええ……」
来た道を引き返すなんてかなりめんどくさい事を何でもないようにサラッと言ってしまう轟くん。
学校の前でそんな会話をしていると、だんだん辺りが騒がしくなってきた。
『ねぇ…あの制服…』
『雄英だよね!』
『私あの人テレビで見たことある!』
『私も!体育祭の時に凄かった人じゃない!?』
(絶対に轟くんのことだよね……)
赤と白の二色の髪の毛に人目を惹く容姿。
しかも雄英生で個性も派手。
有名人だ。
「めんどくせぇな……」
当の本人は凄く嫌そうな顔をしてるけど…
(私がちゃんとカフェまで行けてれば………)
「あの…ごめ───
「行くぞ」
私の手を取って轟くんが早足で歩き出す。
人通りが少ないところまで行ったところで轟くんはようやく歩く速度を緩めてくれた。
「あの……ごめん…」
顔を俯かせながら謝ると、轟くんは何のことだ?と聞き返してきた。
「だって…私を迎えに来たせいであんなことになっちゃって…怒ってる…よね…?」
「怒ってない。体育祭が終わってから制服で登下校するだけでよくあんな風になる」
(慣れてるんだ……)
「お前も俺と居たところを見られたせいで何か言われるかもしれねぇ。悪かった」
「え?私は全然平気だよ!」
「なら良い。あ、此処だ」
着いたカフェはオシャレだけど入りやすい雰囲気だ。二人で席についてお互い注文を済ませる。
先に話しかけてきたのは轟くんだった。
「昨日、大丈夫だったか」
「怪我のこと?そういえば家に帰ってから気づいたんだけど傷が全部消えてたの…!」
「それはリカバリーガールの個性だ。あれくらいの傷ならすぐに治せる」
「へぇ…雄英は保健室の先生に至るまで凄いんだね…」
「まあ、そうだな。親も心配してただろ」
「う…ん……それなりには…」
心配…ね。私の心配じゃないけど……