第3章 *絶対零度*
§ ユイside §
初めてだ。
私の体が弱いことを誰にでもある【弱点】の一つだと言ってくれた人なんて。
今までの人はみんな「こんな個性があるのにもったいない」「これじゃあ普通の個性と変わらない」って…私じゃなくて個性の心配ばっかり。
その話も含めてお礼がしたいんだけど……なんて言ったけど本当はそんな予定全然なかった。
ただ、轟くんが私の家に興味を持ったみたいだから勇気を出してお礼がしたいって言ってみただけなの。
でもその流れでLINEまで交換しちゃた…
どうしよう、お母さん。
今まで青春のせの字も無かった私の人生に急に青春が降りかかってきました。
轟くんと喋ってると凄く楽しいし心の底から笑える。
初めての体験だからこんな気持ちになってるのか、はたまた違う感情なのかはよく分からないけどね、早く明日になってほしい。
軽い足取りで家の玄関に向かったけど、そんな私のルンルン気分はドアを開けた瞬間消え去ってしまった。
「帰ったのか、ユイ」
私を呼ぶ声。この声はあんまり好きじゃない。
「はい…お父さん」
「全く……ヴィランに襲われて個性が暴走したらしいじゃないか。これ以上醜態をさらすな」
「はい…すみませんでした」
「今まで何のために勉強と戦闘訓練を並行して行ってきたと思ってる。それくらい冷静に対応しなさい」
「はい……」
それだけ言って去っていく父。私に何かあって対応出来なければ親の責任になる。だから私を叱る。自分の評価を下げないために。
早足で部屋へと向かって制服も脱がずにベッドに飛びこんで枕に顔を埋める。
お父さんに何か言われた時は必ずこうするのだ。
「早く明日にならないかなぁ……」
呟いた独り言は枕の中へと消えていった。