第14章 *自尊心と自嘲*
「んっ………」
「ユイちゃんが起きたわよ!」
「百…ちゃん?」
目覚めてすぐに目に入って来たのは私の顔を覗き込む梅雨ちゃん。
視界が開けていくのと同時に、クラスの皆がベッドを囲んでいる事に気付いた。
「俺が誰か分かるか?!」
切羽詰まった声でそう聞いてくるのは…
「上鳴、くん」
「良かった~!ちゃんと記憶もある」
全員がほっと肩を撫でおろす中、私は彼を探す。
私が困ってるときはいつも傍にいてくれて、今回だって助けてくれたのにその姿は見つからない。
「あの…轟くんは…?」
まだあまり声が出ない口で問いかけると、皆の顔が急に暗くなる。
「ユイちゃん…その…ユイが寝てる間に色んな事があったんだ」
そう言って上鳴くんは教えてくれた。
昨日爆豪くんが救出された事
オールマイトが戦ったこと
そして、もう戦えないこと
林間合宿で一体何が起きていたのかも全部を教えてくれた。
「オールマイトが…引退…」
平和の象徴がこんなに早くなくなってしまうなんて思ってもみなかった。
幼い頃テレビでその雄姿を見て憧れた。
圧倒的な強さに
笑顔に
いつでも余裕を持っているようなそんな、そんな背中が大好きだった。
オールマイトの引退は私を含め、ヒーローを目指す多くの人々の憧れが消えてしまった事と同じだった。
「轟はもう少しで帰ってくるはずだ。自分で聞いてあげてくれ」
その言葉に夢の中のもう一人の自分が言った言葉を思い出す。
————目を開けた時に辛い思いをしてるのはきっと焦凍だよ。責任感から無茶しちゃったみたい。次は君が焦凍を助けてあげて
言うのも決まずい事なのかな?
見れば梅雨ちゃんは涙目になっている。
「梅雨ちゃん大丈夫?」
私が尋ねると、梅雨ちゃんはハッとして、ぎこちない笑顔を私に向けた。
「大丈夫よ。少し考え事をしてただけ」
(梅雨ちゃんも…色々とあるんだろうな)
その後私は検査が入り、看護師さんが居なくなった後は賑やかな病室から一転静寂が訪れた。