第14章 *自尊心と自嘲*
§ 上鳴電気side §
「なんで…そうなんだよ……」
なんでと言ったが理由は分かる。
気持ちもわかる。
ここは緑谷の病室だ。
その病室には15名程の生徒がベッドを囲むようにして立っている。
俺の言葉の矛先は2人の生徒。
「おい轟、正気なのか?!切島も……!」
この2人は大勢の生徒の前で宣言した。
攫われた爆豪を助けに行く、と。
そしてそれに緑谷が誘われている状況。
助けに行きたい気持ちは分かる。
切島はクラスで1番爆豪と仲が良かったし轟も爆豪が連れ去られる瞬間を直に見ていたらしい……が。それとこれとは別の話。
「ふざけるのも大概にしたまえ!」
クラス委員の飯田が声を張り上げるが、幸い同室の患者が居ない為、この声が赤の他人に聞こえることは無い。
救出作戦に誘われた緑谷も気まずそうな顔を浮かべ、他のみんなも止めた方が良いとそれを止めた。
俺だってそうだ。
USJでもヴィラン襲撃事件でもヴィランの怖さを直に知ってきたはずのお前達が何故自ら危険を犯そうとする?
助けに行くってそんなに簡単な話じゃない。だからプローヒーローも慎重に動いてんだ。
「みんな爆豪ちゃんがさらわれてショックなのよ。でも冷静になりましょう。どれほど正当な感情であろうとまた戦闘を行うというのなら、ルールを破るというのなら、その行為はヴィランのそれと同じなのよ」
「そうだ。プロヒーローも爆豪とヴィランの居場所を追ってる。助けに行くんだよ!お前らが行く必要ねぇよ!」
説得を試みるも2人の口から止めるという言葉は出てこない。
「お見舞い中ごめんね~。緑谷くんの診察時間なんだが」
重苦しい雰囲気を断ち切るように医者が入ってきてこの話も終わりになってしまう。
「轟、ちょっといいか」
緑谷以外全員が病室を出た時、俺は轟に声をかけて外へ出た。