第14章 *自尊心と自嘲*
「轟焦凍です」
「貴方がユイ様の彼氏さん…ですよね?怪我は大丈夫ですか?」
「はい。俺は…大丈夫です。敬語も無しで」
何と言えばいいか。謝って許してもらえるだろうか。
ユイの身内を前にすると言葉が出ない。
二人はゆっくりとユイの前に立ち、静かに涙を流した。
「ユイ様を助けてくれてありがとう」
「え…?」
何故守れなかったと怒鳴っても罰は当たらないのにメニーさんと名乗った女性は俺に感謝の言葉を述べる。
その声は泣いているせいか震えていた。
「いえ…俺は…守れなくてすみません」
目を合わせる事が出来なくて俯くと、次はスウさんが口を開く。
「いいえ。守ってくれました。貴方が居なかったらユイ様は自分で個性を制御出来ずに今より酷い事態になっていた。だから、ありがとう」
決して社交辞令なんかではない。
心からの言葉に目頭が熱くなる。
(完璧に…守れるくらい強いヒーローになりたい。中途半端に守れても悲しむなら完璧に守りたい)
メニー「ユイ様の容態は聞いた?」
「まだ聞いてません」
メニー「貴方が望むなら教えてあげる。貴方には知る権利があるから」
ユイを見て涙を流すくらいだ。きっと良い容体ではないのは分かっている。
「教えてください」
知ることもまた俺の責任。ヒーローとしての責任。
メニーさんはユイを見つめながら大きく息を吐いて話し始める。
「個性の暴走で体中に蔓延している毒ガスに気付かなかったらしいの。そのせいでかなり多量の毒ガスを体内に取り込んでしまって…意識不明なんだって」
スウ「命も危ないと…帰ってこれるかはユイ様次第だとお医者様は言いました」
「…っ……」
命が…危ない。
もしかしてとは思っていても実際口にされると生きた心地がしなかった。
「貴方はユイ様を助けた。だから自分を責めないで。ユイ様が起きたら皆でまたお話ししましょう」
「はい…」
ユイが起きたら
その言葉を確かに胸に焼き付けて、俺は他の病室へと向かった。
その後切島と合流し、八百万の部屋の前で聞いてしまった。
ヴィランに発信機を取り付けた、という話を。