第14章 *自尊心と自嘲*
§ 上鳴電気side §
なんで轟?
アイツはユイちゃんとそんなに仲が良かったか?
個性の暴走ってなんだ?
なぁ…今ユイちゃんの一番近くにいる男は誰だ。
俺だろ。
沢山の人が広場に集まっている中相澤先生が呼んだのはここにはいない男の名前。
「個性の暴走って何ですか、先生!ユイちゃんは…!」
腕の中のユイちゃんはいつもとは別人の様
睫毛が白い
腕も顔も青白い
冷たくなった頬には霜がついている。
辺り一帯の空気を冷たく変えてしまった彼女自身はまるで本物の人形のようだった。
「悪いが今説明している時間は無い。事が終わったらすべて話す。危ないから今はそこをどけ、上鳴」
言われて初めて気づいた。
ユイちゃんの周りの地面が凍っていることに。
「すんません、出来ません…!」
俺だって寒い。だけどユイちゃんの方が苦しいんだ。
なら、轟が来るまでは傍にいてやろうと思った。
眠ってしまわないように声を掛けながら小刻みに震える体を抱き締めた時、広場に再び大きな声が響く。
「っ…はぁ…はぁっ…!先生!!!」
(轟…)