第14章 *自尊心と自嘲*
§ 上鳴電気side §
「ヴィランが襲ってこない!先生!」
爆豪が連れ去れたのと同時刻、補修組もその異変に気付いた。
(さっきまで襲って来てたヴィランがいなくなってる…?)
俺達は建物内にいるから外がどうなっているのかは分からない。
だけど多分撤退を始めている。
「ヴィランが撤退を始めた!救助要請と安全確認に移れ!」
切羽詰まった相澤先生の声が響き、教室内に緊張が走った。
(誰も状況を把握できてねぇ…)
俺達の所にはプロヒーローが二人いる。だけど皆の所にはいない。
特に爆豪…ヴィランの標的になっているアイツは無事なのか。
元々短気な性格だ。近くに誰かが居たところで、戦うなと言ったところでそれを無視して戦うんだろう。
ツンツン頭の友達を頭に浮かべていると、外が何やら騒々しくなった。
「無事か!」
聞こえたのはブラドキングの声。
皆でタイミングを合わせたかのように外へ飛び出すと、そこにはボロボロになりながらも自分の足で立って歩く者が二人。
「徹鐵!大丈夫か?!」
切島が駆け寄る先にはB組の鉄哲徹鐵が。
体育祭で戦い、インターンシップでも同じ職場になり、仲良くなったのだという。
そしてその隣には物間の姉御的な存在である拳藤一佳。
「二人とも。喋れるか」
ブラドキングの問いかけに頷いた2人は交戦中の様子を語る。
「毒ガスを振りまくヴィランと交戦しました。恐らく私たちより年下です」
「すんでのところで倒せたからそこら辺で気絶してるはずだ。でもこのガスをまともに吸ったら危ないかもしれねぇ……です」
(毒ガス……?!)
全く気づかなかった。毒ガスなんて吸ったら普通の人間は一溜りもない。
「お前は大丈夫なのかよ、徹鐵?!」
「俺達は八百万に会ってマスクを作ってもらったから何とかなった」
2人と話しているうちに他の連中もどんどん集まってきた。
無傷…というわけにはいかず、それぞれ傷を負っている。
その中でも毒ガスで気絶している奴がかなり居る。
「……爆豪が来ないな」
先生もここを離れる訳にも行かず、皆の帰りを待つがそれでも数人が帰ってこない。
やっとの事でB組に引きずられながら帰ってきた八百万も頭を怪我して気絶寸前になっていた。
(何だよ……これ……)