第13章 *番外編 Trick yet Treat!*
誰もいない廊下にコツコツと私がヒールで走る音が響き渡る。
1曲だけなら、と思ってダンスをした後、かなりの人に声をかけられてしまい、直ぐには抜け出せなかった。
(会場に焦凍いなかったっぽいし…ずっと待ってるのかな……)
愛しい人の姿を思い浮かべると、廊下の突き当たりで壁に背を預け携帯を弄っている人影を見つけた。
「焦凍……!」
やっと触れることの出来る距離まで近づくと焦凍もこちらに気付いてスマホをポケットにしまう。
そして、おもむろに私の腰を抱き寄せて足早に歩き出した。
「遅せぇ……」
紅白の髪とは対象に黒いスーツを身につけてむすっとしている焦凍はいつもより大人っぽいのに子供っぽい。
「ごめんね」
無言で連れてこられた所はある部屋の前。
扉に書かれた部屋番号は【1210】
ポケットからカードキーを取り出して部屋の中に入ると、焦凍は私を横抱きにしてベットに押し倒した。
「あの、焦凍?この状況は?」
「分かるだろ。襲ってんだよ」
顔を隠していた仮面も取られて少し不機嫌にも見える焦凍と目が合う。
こんなにスマートに襲ってると言われては私も逆に冷静になってしまう。
邪魔だとでも言うように首に巻かれたネクタイを外す焦凍を見て、自然と言葉が出てきていた。
「ネクタイ…外しちゃうの?」