第13章 *番外編 Trick yet Treat!*
§ 轟side §
「ネクタイ…外しちゃうの?」
放たれたのは想像もしていない言葉。
この状況でもっと他に言うことがあっただろうに何故注目するのがそこなのだろう。
「ダメなのか?」
純粋な疑問だった。
特に答えに期待をしていた訳では無い。
ユイはこの問いに対して少し考えたあとにぽつり、と呟いた。
「スーツ着てる焦凍、カッコよかったからもうちょっと見たかったな〜…」
「お前な……」
無意識もいい加減にしろ……
いつもは周りばっかり気にして好きの「す」の字も口にしないくせに、2人になると急に素直になる。
ユイと両手を繋いで、やり返しのつもりで俺も呟いた。
「それなら俺も残念だな」
「何が?」
「折角こんな格好してんのに今から脱がせちまうから勿体ねぇ」
ユイは肩が大きく空いた大人っぽいロングドレスを身に纏っている。
高校生にしては大人っぽいんじゃねぇかと思っていたがベットの上だとそうでもねぇ。
気付けば、ユイの顔が真っ赤になっていた。
「自分は言うのに人に言われたら赤くなるんだな」
その言葉に、ユイは繋がれた手をキュッと握り、クルクルと巻かれた髪に顔を埋めてしまった。
これからどうしてやろうかと思った時、先程解いたネクタイが目に入る。
(たまにはこういうのも良いかもな)
「ユイ、抵抗しなくていいのか?」
一言だけ忠告をして繋がれた両手をユイの頭上に持ってくる。
「え…何してるの、ちょっと!焦凍っ……」
ユイも俺が何をしたいか分かったようで身をよじらせるが、男の力には敵わない。
ユイの両手はあっという間に俺のネクタイで縛られてしまった。
「顔見せろ」
両手で俺の方を向かせてみると、頬を上気させた女が涙目でこちらを見つめる。
「誰か来たらどうするの」
「ここは俺の部屋だ。誰も来ねぇ」
「声…聴こえちゃったら……」
「そうだな。隣の部屋は俺のクソ親父だからな。ちゃんと我慢しろよ」
最近ユイに触れられていない。
2人になれた時にそんな事を言われても止めてあげるほど俺は優しくねぇ。
ユイの唇に自分の唇を重ねると、ユイは抵抗をやめて俺を受け入れ始めた。