第13章 *番外編 Trick yet Treat!*
その場で人の流れに逆らって焦凍の所に行くことは出来ず、そのまま自分の部屋に戻った。
そして、先程の予想はここで見事的中する。
手元の携帯がブルル…と振動して明るくなった画面を見ると、それは焦凍からのLINEの通知だった。
画面には一言
「お前の部屋、何号室だ?」
目が合ったことに触れることはせず、ただ部屋番号を聞いてくる焦凍。
「1205号室だよ」
部屋番号だけを伝えると、焦凍からも部屋番号が送られてくる。
「俺の部屋は1210号室だ」
かなり近い部屋だったことに驚きつつも、すぐそこに焦凍がいる事実に自然と頬が緩む。
(でも焦凍の部屋が近いってことはエンデヴァーの部屋も近いってこと?)
部屋を出た際にプロヒーローと出くわしたら…と考えて勝手に緊張してしまった。
「パーティーが始まったら隙をついて会場を出ろ」
ぶっきらぼうな言葉の約束を承諾して少し話しているとあっという間にダンスパーティーの時間に。
ダンスパーティーのドレスコードに合わせて紺色のシックなドレスに着替えて仮面を身に付け、会場へと向かう。
このパーティーは社交辞令は無し。
無礼講で楽しもう、という目的で仮面をつけてのパーティーらしい。
(って言ってもわかる人は分かるけど……)
顔は隠せても特徴的な髪型や体格の人は直ぐに分かってしまう。
心の中で「主催者がただやりたかっただけでしょ」と呟いた。
それは特徴的な髪色を持つ"彼"も同じなようだ。
「あの……!一緒に踊っていただけませんか?」
焦凍の周りには次々と女の子が列を作り、ダンスの順番待ち。
焦凍だと分かっていてダンスに誘っているように見える。
ダンスパーティーでは焦凍の隣にエンデヴァーが居ないことも、女の子が次々寄ってくる理由の一つだろう。
(今私が抜けても焦凍が抜けられないよね)
「すみません!1曲いかがでしょうか」
いつ抜け出そうかと考えながら歩いていると、見知らぬ男性に声をかけられた。