第3章 *絶対零度*
§ 轟side §
プロヒーロー同様、ヴィラン連合の事で警察も忙しいらしく、家の方向が同じだったこともあって俺たちは一つのパトカーに乗ることになった。
「あの…轟さん、今日は本当にありがとうございました」
「別に俺は何もしてない…あと、敬語とさん付けもいらない」
「でも……」
「同い年なんだしそれくらい普通だろ」
「そう…だね…ありがとう」
ぎこちなく、でも心の底からの笑顔を浮かべてはにかむ月城の顔に、何故か俺は目が離せなかった。
「あの…私の顔に何かついてる?」
俺の視線に気づいた月城が顔を覗き込もうとするが俺は視線を逸らし、急いで話題を変えた。
「お前が俺と少し似てると思っただけだ」
「似てる…?」
急いで話題を変えたとは言ったが似てると思ったのは嘘じゃねぇ。
「笑うの苦手だろ、お前」
目を覚ました月城と最初に喋った時から思っていた。
言葉遣いはちゃんとしているしどれも心からの言葉で嘘はない。でも表情が変わらない。
「確かに私は表情全般を作るのが苦手かもしれない…。今まで同世代の子と会話をすることなんてほとんどなかったから」
月城の顔が少し寂しそうに歪む。
俺にはわかる。俺だって無表情だ。自覚してる。だから月城が寂しがっているのも分かった。
「俺もだ。兄弟と会話をすることも殆ど無かったから人と接するのは苦手だ。特に初対面の奴には怒っていると勘違いされるな」
「じゃあもしかして保健室でずっと私の事見てたのって怒ってたわけじゃないの…?」
「お前の個性の事で気になることが多かったからつい見ちまっただけだ。怒ってない」
「そうなんだ…よかった。でも怒ってるのと勘違いされるその気持ち、わかるかも。私も学校でよく怒ってると勘違いされるの」
「やっぱり似てるな」
「ふふっ…そうだね」
また、笑った。