第12章 *手をかけた扉*
目前に広がるのは深い闇。
勿論ダークシャドウはではない。
コイツには見覚えがある…USJにいたヴィラン。
確かオールマイトをも苦しめていた厄介なヴィランだった。
「合図から五分経ちました。行きますよ、茶毘」
その声と共にそれぞれのヴィランの近くにワープゲートが現れる。
そのゲートの中に女のヴィランと俺が交戦したマスクの男が入っていくと、その姿は闇へと消え、残るはツギハギと仮面野郎だけ。
仮面野郎は俺達を追いかけることも無く、そそくさとワープゲートに入っていこうとした。
(なんで追いかけてこねぇんだ…?)
ヴィランの狙いは爆豪のはず。そもそも爆豪を連れ去ることに成功したから撤退を始めたんじゃないのか?
なんで取り返そうとしねぇんだ?
「あれはどうやら走り出すほど嬉しかったみたいなんでプレゼントとしよ」
ワープゲートに入る直前仮面野郎はそう言った。
「物を見せびらかす時ってのは…
ヴィランが顔を覆っていた仮面をズラし、茶色の瞳を覗かせる。
「見せたくないものがある時だぜ?」
嘲笑うかのように出された舌には障子が取り返したものと同じ水色の球が二つ。
その余裕な顔と態度に、"まさか"という言葉が口に出た。
(あれが本物の爆豪と常闇っ…)
仮面野郎が指を鳴らすと、障子の持っていた玉が形を変える。
そこから出てきたのは爆豪と常闇には似ても似つかない氷の塊だった。
(マズい!)
こうなると本物の二人はまだアイツの手中にあるという事。
ワープゲートに入られたら一巻の終わりだ。
全速力で逃げた道を全速力で引き返すが、既にその下半身は闇の中へ。
(間に合わねぇ…っ…!)
その時、闇の中を青白い光が横切った。
(青山…!)
光源にいたのは恐怖を必死に押し殺しながらネビルレーザーを打つ青山。
その一筋の光は見事仮面野郎に命中し、その衝撃で開いた口から玉となった二人が出てきた。