第12章 *手をかけた扉*
勢いよく投げ飛ばされた体は遥か上空へと舞う。
まるで風が見えているかのように視界が遮られて前がよく見えない。
目線を下に向けると緑の木々が揺れ、上を見ると、暗くなり始めた空に一羽の鳥が飛んでいる。
そして目の前、急速に近づいてくる見覚えのある黄色のマント。
風の音で気付かなかったのか
それとも油断していたのか
俺達に気付かず二人を攫えるくらいの実力があるピエロはその仮面をこちらに向けない。
周りを確認することもせず、もう帰るだけだ。楽勝だったとでも思っているのだろうか。
(思い通りにはさせねぇ)
その距離約3メートル。
表情が読み取れない仮面がようやくこちらを振り向くがもう遅い。ヴィランが完全にこちらに気付いた時には、3人がかりでヴィランに突進していた。
(……っ!ナイスタイミング!)
ヴィランの体が傾いたと同時に麗日の個性が解除されて俺達は急降下を始める。
勿論俺達の下敷きになっているヴィランも一緒にだ。
———————ズドンッ!!!
砂埃と共に勢いよく打ち付けられた体。
俺達ではない。ヴィランの体だ。
これだけ強く打ち付けられればそこそこのダメージを負うだろう。
(ここで畳みかける…!)
ここまでは作戦通り。
後はこのヴィランから爆豪と常闇を取り返す予定だった。
……のだが。
現実はそう甘くは無いようだ。
「知ってるぜこのガキ共!」
聴こえてきた声は俺の下敷きになっている奴の声ではない。
ヴィランが逃げ出さないように警戒しつつも声のしたほうに視線を向けると、埃の向こうにヴィランが3人立っていた。
(おい…何だこれは…)
悪運にも程がある。
このデケェ森の中、たまたま落ちた場所にヴィランが3人もいるなんて流石に想像もしない。
仮面野郎が落ちる場所をここにしようとしたそぶりも無かった。完全に俺達の悪運だ。
その中の一人、ツギハギの男が手からあお青い炎を出し、容赦なく手のひらを俺達に向けた。