第12章 *手をかけた扉*
(クソ……速ぇ……)
どれだけ走ってもヴィランとの距離が縮まらない。
少しづつ距離が話されていき、見失わないようにするので精一杯だ。
「麗日さん、僕らを浮かせて。そして浮いた僕らを蛙吹さんの舌で思いっきり投げ飛ばして!」
(なるほど。相手が上空にいるなら俺らも上に行くって事か。だが緑谷は……)
この案を提案した緑谷は自分も行くかのような言い方をしたが、緑谷はもう自分では殆ど動けない。並の人間ならとっくの昔に失神している。
「緑谷!お前は残ってろ!」
この局面で決して間違いではない言葉、1番妥当な判断だったはずだ。
きっと他の奴らも同じ事を思っていただろう。
だが次に緑谷から帰ってきた言葉はそれを拒絶した。
「痛みなんか今は知らない」
その声は今までで1番殺気を帯びていた。
その目はただ一点…ヴィランだけに向けられ絶対に離そうとしない。
その理由はクラスメイトが攫われたことか。それとも中々取り返せない焦りからか。恐らくどっちもなのだが、俺は他にも理由があると思った。
(爆豪だからか)
緑谷はクラスメイトの誰が攫われてもこうなっただろう。
だが、緑谷と爆豪は子供ん時から一緒だと聞いた。
今は決して仲良しとは言えないが、幼なじみなりに爆豪を認めているところもあるんだろう。
(緑谷は前が見えてねぇ…ここで何を言っても無駄だ)
今は時間が命だ。1秒でも無駄には出来ねぇ。
「……分かった。俺と障子、緑谷で行く」
「無茶はダメよ。だけど……お願い。取り戻して」
「あぁ」
心配そうに見つめてくる蛙吹に3人で頷くと、体に巻き付けられた舌が勢いよく俺たちの体を持ち上げた。