第11章 *林間合宿*
「う…ッ…グアアアッ…」
呻き声が聞こえて、黒い物体の中心で苦しむ常闇を見つける。
そこで初めて俺は気付いた。
この物体は常闇の個性“ダークシャドウ”なのだと。
「早く光を!常闇が暴走した!」
(常闇は暗闇で個性を制御出来ねぇ…だから今回の合宿で個性の制御を目的としてた)
だが合宿もまだ始まったばかりで完全に制御できる状態では無いのだろう。
いつもの何倍にもデカくなり、怪物の様な声を響かせ森の暗さを更に闇で覆いつくすダークシャドウは主である常闇までも覆い自分以外全てを敵に回しているかの様。
(俺の炎と爆豪の爆破の光でダークシャドウの暴走を止める作戦か…)
「見境なしか。よし、炎を…『待てアホ!』」
障子に言われて、光を作り出そうとした俺を止めたのは爆豪。
つい数分前まで人の話を聞かず単独行動を続けていたお前と俺、どちらがアホか。
この状況で口に出すことは無かったが頭の中にそんな言葉がよぎった。
ダークシャドウが離れた事によって身動きがとれるようになったヴィランが個性を発動しながらゆっくりと起き上がる、
「ウ…ッ…肉ゥゥゥ…許せない…」
本気でイラついているような声を出し、空高くまで刃を伸ばすヴィラン。
ここからだと顔は見えないが今頃目を血走らせていることだろう。
「その子達の断面を見るのは僕だァ!横取りするなァアア!!」
怒りの矛先はダークシャドウ。
幾つもの鋭い切っ先がダークシャドウに襲い掛かる。
「ねだるな……三下ァァア!」
だが、闇に刃は通用しないのか、ダークシャドウは苦しむこともせず再び闇でヴィランを覆う。
「ウァ…ァァ…」
バリバリバリッ!!!!
低い声が聞こえたのと同時に、俺達を苦しめていた細長い歯は粉々に砕け散り、その破片は宙へと舞う。
もう戦う道具も失ったヴィランは抗う術も無く闇に呑み込まれていく。
「uaaaaaaaa!!」
ダークシャドウは渦を巻き、目を三日月型にさせてヴィランを握ったまま腕を振りかざす。
何本かの木をなぎ倒してからようやく開いた手のひら。
そこから出てきたのは木の幹に体を打ち付けられピクリとも動かなくなったヴィランだった。