第11章 *林間合宿*
この森の中じゃ無闇矢鱈に個性を使う事は出来ない。そんな事をすれば俺の炎と爆豪の爆破が森ごと焼き尽くしてしまう。
俺達を襲った刃は1点に向かって伸びている。恐らくそこから個性を発動しているのだろう。
ゆっくりとその先を辿りると、そこにあったのは1本の木。
(どこだ…………)
木の後ろか……?
違う、そこじゃない。
「……!!爆豪、木の上だ!」
葉と葉の間から見えた人影。
爆豪が木を焼かない程度に爆破をすると、地面に突き刺さっていた刃が木の上へと戻っていく。
「アイツか…クソヴィラン!」
姿を現したヴィランは木から木へと乗り移ってまた刃を使って攻撃してくる。
暗闇の中で見えたのは黒マスクの男。
歯が伸びて刃になっている。
「アイツ…どこかで見たな」
確か指名手配中のヴィラン……1度は捕えられたものの脱獄をしたと大騒ぎになっていたのを思い出す。
「爆豪気を付けろ!ソイツは指名手配中のヴィランだ!」
「あぁ?!上等だオラァ!」
「おい!戦闘許可が出てないだろ!」
俺は身を持って知っている。
ヒーロー殺しステインと戦った時も何の許可も無しに戦い、結果的に警察に叱られた。
だからこそ、今は直ぐに戦う事は出来ない。戦うのは最終手段だ。
個性を使うのはあくまで攻撃を防ぐため。直接危害は与えられない。
「…ッ…クソが!おい半分野郎!来た道を戻ってプロヒーローのとこまで行くぞ!」
「逃げるのかぁ?ヒーロー志望のエリートがよぉ!!」
今回ばかりは爆豪も理解してくれたようで、ヴィランの攻撃を何とかかわしながら肝試しのスタート地点まで急いで戻る。
すると、木の横にB組の奴が倒れているのを見つけた。
「おい!大丈夫か!」
特にヴィランと交戦した跡も目立った傷も見当たらないが、呼びかけても返事が無い。
「クソ…この先には行けねぇ!」
爆豪も爆豪で何かを見つけたようで前方を見てみると、霧が更に濃くなってきていた。
この独特な臭い。そして無傷で倒れているB組の奴からしてこの霧は多分毒だ。
「ここで如何にかするしかねぇか……」
B組の奴を背負って、走るにも直ぐに追いつかれてしまう。
だがここに置いていったら確実に危害が及ぶ。