第11章 *林間合宿*
補修で肝試し自体不参加なのでユイとペアになることは無いのだが、もしもなっていたら確実に俺は上鳴に嫉妬していたことだろう。
俺は二組目でユイと緑谷は一番最後だ。
「はーい次爆豪くん轟くんペア!いってらっしゃい!」
自分が肝試しに参加するわけでは無いのにこの場を一番楽しんでいるんじゃないかと思うくらい明るい声でピクシーボブが俺と爆豪に声を掛ける。
「オラ、半分野郎!俺はお前と肝試しするつもりなんてねぇからな!」
捨て台詞を吐いて一人でズカズカ森の中に入っていく爆豪の隣を歩くと、無言の肝試しが始まった。
「うおっ」
地面から生えた生首に足を止める。
爆豪がそこまで驚くはずもなく俺と同じような反応。
前の組のリアクションがよっぽどよかったのか、それとも俺達のリアクションが薄すぎるのか、脅かす組のB組も生首をきょとんと横に傾けてから、声を殺して笑い始めた。
(早く帰って寝てぇ………)
時間的には既に全てのペアがこの森に入っている頃だろう。
まだ半分しか終わっていないのか、それとも終盤に差し掛かっているのかも分からない森の中を見渡す。すると、空に黒煙のようなものが上がっていることに気付いた。
ふと後ろを振り向くと、自分達が通ってきた道にも霧がかっている。
(B組の奴の個性か?)
もしそうだとしたら、あの道を通っている俺達にもあの霧の中にいたはずだ。
それに、前方から耐えず聴こえてきていた前の組の叫び声もいつの間にかしなくなっている。
(何か…おかしくねぇか…)
足を止め、前を歩く爆豪を呼び止める。
「待て、爆豪」
「んぁ?俺に話しかけてきてんじゃね……っ…?!」
爆豪がこちらを振り向いたのと同時、横から何かが雨のように降り注ぎ、咄嗟にそれを避ける。
爆豪も上手く避けられたようだ。
今ので分かった。
これは確実にB組じゃねぇ。
ピクシーボブが確かに言った。脅かす側は直接接触禁止だと。
地面に突き刺さった刃のようなものは確実に人に危害を与えられるくらい鋭いもの…しかも脅かし目的では無く、当てに来ていた。
だとすると考えられるものは一つ…一番考えたくない可能性だ。
「……ヴィランか」
上鳴電気がユイと再会するまであと一時間。