第11章 *林間合宿*
§ 轟side §
「脅かす側先攻はB組!A組は2人1組で3分おきに出発。ルートの真ん中に名前を書いたお札があるからそれを持って帰ること!脅かす側は直接接触禁止で個性を使った脅かしネタを披露してくるよ!」
補修組がいなくなった後、淡々と進んでいくルール説明。
いつもならこんな事にさほど興味を示さないのだが今日は少し思うことがあった。
別に肝試しは好きでもないし嫌いでもねぇ。
でも…
(どうせやるならユイと一緒にいてぇ)
この合宿中ユイとろくに会話をしていない。
LINEでは昨日も話したが、お互い疲れていてそんなに長くは話さなかった。
ユイが俺の名前を呼んだのもあの一回…物間にちょっかい出されてる所を止めに入った時だけだ。
「よし!くじを引くぞ!」
飯田に促されて順番にくじを引いていく。
そして俺とペアになったのは
「おい尻尾!代われ!」
強烈に俺とペアになることを嫌がっているこの男だった。
俺は別にユイとなりたいと思ってはいても、このクラスでペアになりたくない奴は特にいない。
中間試験のように二人ペアで協力して何かをする訳でもなく、ただ歩くだけなのに何をこんなに嫌がることがあるだろうか。
(ま、爆豪はそういう奴だしな)
ユイを探すと、一緒に居たのは緑谷だった。
ユイと話すのにも緊張してあたふたしている緑谷。二人の間にかなりの温度差が感じられる。
(緑谷なら安心だな)
保護者かのように、ユイの姿を追い続けていて気付いたことがある。
それは、上鳴がユイを好きだという事。
元々誰にでも話しかけていくやつだとは思っていたが、ユイと話している時はかなり楽しそうだ。
それに、俺がユイの事を見ている時その隣に上鳴が居る事が多々ある。
多分緑谷は好きになったことを自覚した日には緊張して話しかけられなくなるのだろう。上鳴はその逆。