第3章 *絶対零度*
「いくら体が弱かろうが耐えきれる限度が低かろうが個性はそれに比例しない。何かの拍子で限度を超える個性を出してしまう可能性もあるんだよ」
「はい…私は感情が高ぶってしまった時に自分の意志に関係なく個性が暴走してしまって自分の体まで凍らせてしまうんです」
「個性の暴走ですか…?私も警察として色々な個性を見てきましたがあまり聞いたことがないですね…」
「そりゃあここまで強い個性を持つ子はなかなかいないからね。同じような症状でも大体は体力の症状が激しい、くらいで済むんだよ」
「対処法はあるのか」
「それは………」
ここが、あの時初対面の人におそらく私は助けられない。と思った根拠だった。
「過呼吸と同じような症状なので気持ちを落ち着ければ個性も制御できるようになります。でもそれは母以外にはできなかった…と、思います」
個性が暴走している状況で人の声なんて全く頭に入ってこない。でも轟さんが「俺にもできた」と言わんばかりの視線を送ってくる。私だって今まで母にしか出来なかったことを初対面の人がやってのけたことに疑問しかないのだ。
「後は…プロヒーローにもいる"個性を消す個性"とか"眠らせる個性"とか…個性自体を無理やり無効化しても大丈夫です」
「それじゃあ今まではどうやって対処していたの…?学校でその症状が出てしまったら…」
塚内さんが心配そうな瞳を私に向ける。
「小さい頃は母が私を落ち着けてくれてなんとか対処できてたんですけど…小学生になる頃に母が亡くなってしまって…それからは学校には殆ど行っていませんでした。人に危害を加えるといけないと父が……」
「えっ…でも、その制服は……」
私は今頭脳で言えば国内でも屈指の難関校に通っている。
制服を見ただけで学校が分かるとは流石は警察、とでも言うべきだろうか。