第11章 *林間合宿*
走り込みは先生が言った通り死ぬほどキツかった。
平坦な道ではなくピクシーボブが作り上げた道を走る為、走るだけでは足元がデコボコしていて走りにくい。
その上、私が走っている横では他のみんなが特訓中。
エアーボールに入ったお茶子ちゃんが物凄い勢いで転がってきたり三奈ちゃんの酸が降り掛かってきたり……それぞれの特訓場所で個性に襲われそうになる。
「うぉっ?!」
「失礼!」
突風と共に私の横を走り去って言ったのは飯田くん。
皆の近くを走るのも先生が言っていたトレーニングの1つで体が体力の変化に慣れるように個性を出させるため。
個性を出し続けているクラスメイトの近くにいるとどうしても個性に襲われそうになることがある。それを自らの個性で防ぐことで走りながら個性を出す事が出来るからだ。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
(やっ……やばい。次は爆豪くんの所だ)
爆豪くんは熱湯に手を入れてひたすら爆発を起こす特訓。
氷壁を作りながら走り、なんとか被害に遭わないようにしたが怖い。怖すぎる。
「本当に死ぬって……」
氷壁の上から注ぎ込む熱風に汗が滲み出る。
急いで爆豪くんの横を通り過ぎると、次は冷気と熱気が入り乱れる場所へ突入した。
(あ…………)
そのど真ん中に居たのは紅白頭の少年。
少年の額にはこちらからでも分かるほどの汗が滲み、辺り一体は氷と炎でいっぱいになっている。
タンクトップでは隠れることの無い逞しい腕がさらけ出され、手から休むこと無く個性を出し続けている。
「焦凍……」
思わず呟くと、聞こえるはずが無いのに焦凍はゆっくりと顔を上げてその瞳に私の姿を写した。
そして、焦凍は小さく笑う。
「……っ…………」
その瞬間息が詰まったのはきっと疲れていたから
顔が熱くなったのはずっと走り込みを続けているから
汗をかいている自分の顔を見られるのが恥ずかしくて、でも何故か氷壁で視界を遮ることはしたくなくてぱっと顔を逸らし、少しスピードを上げてその場から走り去った。
そして夕方。
元から体が弱いのもあって、少し休憩を取りつつやっと日中が終わり、夕ご飯の時間。