第11章 *林間合宿*
合宿2日目*AM5:30*
「おはよう諸君。本日から本格的に強化合宿を始める。今合宿の目的は全員の強化、およびそれによる仮免の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かう為の準備だ。心して臨むように」
「「「はーい……」」」
合宿2日目。あくびをしながら外に出たA組を出迎えたのはクラス担任の相澤先生。
「お茶子ちゃん寝ぐせ付いてるよ…上鳴くんも!」
「ユイちゃんありがとう…どうしても眠たくてギリギリまで寝とったんよね…」
「俺も…この時間に遅刻しなかっただけマシだぜ」
「でも確かに私も朝強いほうじゃないし流石にキツかったよ」
あんな鬼のような特訓の次の日に五時起きなんてたまったものじゃない。綺麗な朝日が合宿日和と言わんばかりに私たちを照らしている。
(そういえば確か焦凍も朝得意じゃなかったような…)
ちらっと横を見ると、涼しい顔で目を瞑っている焦凍の姿。
(眠いんだね…)
心の中で苦笑して先生の方へ向き直ると、殆どが布に覆われている瞳がいつもよりも気だるげに伏せられた。
どうやら先生も眠たいらしい。
「というわけで爆豪。そいつを投げてみろ」
相澤先生が爆豪くんに投げたのはソフトボールのような球体。爆豪くんはそれをキャッチして一歩前へ出た。
「あの…あれって…」
私以外の皆は「体力テストの…」とか「入学した時の…」とか懐かしんでいるけど私にはさっぱり分からない。
梅雨ちゃんに聞いてみると、
「入学してすぐ体力テストがあったの。これで最下位だった生徒は除籍処分って言われたのよ。その時にボール投げもしたの。結局誰も除籍はされなかったけれど」
と教えてくれた。
「入学直後の記録は705.2m。どんだけ伸びてるかな」
ボール投げの記録が705mとは流石だ。桁が違う。
瀬呂くんは一キロまで行くんじゃないかと言っている。
「んじゃ、よっこら………」
「くたばれぇ!!!!!」
ボール投げには不釣り合いな言葉を叫びながら爆風と共にボールは宙を舞い、直ぐに肉眼では確認出来ないほど遠くに行ってしまう。
かなり遠くに行ったと思うのだが、先生のスマホに表示された数字は709.6m。
瀬「あれ?思ったより…」
爆豪くん自体も他のクラスメイトも、予想していた結果ではないようだった。