第3章 *絶対零度*
「いえ…見てません」
目の前で淡々と質問に答えていた月城の顔が暗くなる。
コイツは何か知っている。
何故知っているのに話さない?ヴィランを庇っているとでも言うのか。それとも他に理由があるのか。
幸いその答えを知る人間は目の前にいる。
考えるのをやめて月城の次の言葉を待っていた俺だったが、待っていた次の言葉に俺の思考回路は停止した。
俺が氷の個性を持つであろうヴィランに興味を示していたのに特にこれといった理由はない。
ただ、目の前に獲物がいるにも関わらずヴィランを攻撃するヴィランなんて聞いたことがなかったから少し気になっただけだ。
それなのに………
「「は??」」
放たれた腑抜けた声は2つ。警察の奴と俺だ。
今、月城は確かに言った。
それは私の個性だ、と。
何が言いたい。
「お前の個性?俺がお前を見つけた時、お前は凍死する寸前に見えた」
思わず口に出してしまった。
だってそうだろう。自分の個性で自殺でも図ったってのか?でもヴィランに襲われてたんだよな?
もう何がなんだか分からない。
「あんた、もしかして個性を制御できないんじゃないのかい?」
黙り込んで何も言わなくなってしまった月城の代わりに口を開いたのはリカバリーガールだった。
そして、その言葉に月城は小さく頷いた。