第9章 *Cultivate love*
あの日と同じ感覚に懐かしさを覚えて目を覚ますと、焦凍が隣で頭を撫でてくれていた。
「おはよう、ユイ」
「……おはよ」
腕が勝手に焦凍の首に巻き付く、
「私ね、たまにお母さんの夢を見るんだ」
「いつも同じ夢を見るってやつか?」
「ううん、いつも違う夢…お母さんと一緒に遊んだ時の記憶とかが夢になって出てくるの。それを見てるとね、あの時の言葉でお母さんを傷つけてたかもって思うの」
「別に。幼心なんてそんなもんだろ」
私を抱き上げた焦凍が長椅子に腰を下ろして私を抱きなおす。
「傷付けた事も、逆に助けることもあるんじゃねぇのか、子供の言葉ってのは。お前は少し自分を責めすぎだ」
「…そうかな」
「そうだ。そろそろ飯にするぞ」
「あ、うん!私が作る!」
焦凍に抱えられたまま立たされてキッチンへと向かう。
焦凍は見た感じ才能マンだから料理も一通り出来るのだろうか。
「焦凍は大人しく休んでる事!分かった?」
「分かった」
仮にそうだとしても、「じゃあこれからはお前にも頼むことにする」という言葉を早速実行に移してくれている。
何にするか迷ったけど、私が昼寝をしてしまって空も暗くなってきた頃だったので直ぐに作れるオムライスにした。
「何か、こういうの良いな」
「こういうのって?」
オムライスに乗せる卵焼きを作っている私の背中に柔らかい声が投げかけられる。
「家族っつうか…二人暮ししてるみてぇ」
家族…確かに同じ家で同じ料理は家族みたい……
家族?!?!
「うっ、うるさい……!はい!出来たから食べよう!」
「?あぁ」
家族って、つまりはそういう事で、そういう事だ。
兄弟とか従兄弟という意味にも捉えられるが、付き合っている男にそんなことを言われたら誰だってそう思うだろう。
(今自分がどんな爆弾発言したかなんて本人は気付いてないんだろうな……)
自分だけがドキドキしながらも二人分のオムライスを机に運び、焦凍と向かい合わせになって夕ご飯を食べた。