第9章 *Cultivate love*
「えっ…………」
「嫌、か?」
「あっ、えっ、えっと」
音もなく現れた爆弾が私の中で大爆発を起こす。
言葉が上手く出てこなくて口が生まれたての子鹿状態だ。
(焦凍と2人で1週間……?!)
近場ではあるけれど、2人で1週間過ごすなんて私の中では旅行のようなもの。
「ユイ?ユイ……!やっぱり嫌だったか?」
「ううん!そんな事ない!嬉しい……!」
「じゃあ決定だな」
*。°○.:+**。°○.:+**。°○.:+**。°○.:+**。°○.:+*
私は鏡の前で、遅れてやって来た感動と嬉しさと、幸せな感情に包まれてただ無言でニヤけることしか出来ない。
「ユイ様、ユイってば!上の空じゃないですか……」
「あっ、すみません……」
せっかくの2人で過ごせる時間。わざわざ焦凍が作ってくれた時間。
1番可愛い姿を見てもらいたいし、似合うかは分からないけれど勇気を出していつもと違う洋服を買ってみた。
「ユイ様…何を怖がっているのかは分かりませんが、やらずに後悔するよりかはやって後悔した方が宜しいのでは?」
(ワンピース姿、とっても似合ってると思うんですけどね)
母親代わりの女は心の中でそう呟いたのだが、目の前で葛藤する女の子には聞こえるはずも無い。
「私……ワンピースにします…」
遠慮がちにワンピースを握り締めると、スウさんはニコッと笑って「そうしてください」と言った。
「着替えも持って行くんですから、何もこれだけを着るわけじゃないですし」
「そうですね……ありがとうございます」
メニーさんもだが、スウさんは私が本当に悩んでいると、言葉遣いは丁寧なものの口調はお母さんのようになる。
それにいつも助けられているのも事実だ。
「では、こちらのお洋服は鞄に詰めておきますね」
「ありがとうございます」
準備を済ませて携帯のディスプレイに表示されている時計をただぼーっと眺めていると、バイブ音を鳴らして携帯に「轟焦凍」と名前が表示された。