第9章 *Cultivate love*
「う〜ん……」
鏡の前で白のワンピースとジーパンを並べて頭を抱える。
「この光景、数日前にも見た気がしますけど……」
しかめっ面をする私の横で苦笑いを浮かべるスウさん。
確かに数日前、焦凍と初めての休日デートだった日にも鏡とにらめっこをしていた。
だけど今はその時とは訳が違うのだ。
私の手に握られているのはワンピースとジーパン。
普通悩むならワンピースとスカートとか、ショートパンツとかそんなとこだろう。
でも私はワンピースかジーパンかでかなり悩んでいた。
「そんなに悩まずにワンピースを着てみたらかいかがですか?」
「うぅ〜……だって、だって……!」
私ワンピースなんて着たことないし!!!!!
物心ついた時から肌を露出する服装に抵抗を覚え、それからスカートやワンピースは着たことが無い。
では何故今私の手にはワンピースが握られているのか。
「今日の為にわざわざ買いに行ったんでしょう?今日着ないでいつ着るんですか」
今日、今日のために買った。
抵抗、と言っても嫌いなわけではない。スカートを着てみたい気持ちはあったけれど自信が無くて着れなかった。
でも遂に買ってしまったのだ。試着もして、悩みに悩んで買ったワンピース。
(だってあんな事言われたら浮かれちゃうでしょ……)
事の始まりは数日前、夏休みの始まりを告げる日でもある修了式の日の帰り道の事だ。焦凍は私の手を急に握ってきた。
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「あの約束、覚えてるか?」
「約束?」
「夏休みは一緒に居るって約束」
「あ……覚えてるよ」
雄英に入学してすぐの時に交わした焦凍との約束。
そういえば学校で付き合っていることを伏せる代わりに夏休みは一緒に過ごす、と約束をしていた。
「夏休み、林間学校までの1週間だけ俺と住まねえか」
「……?」
言葉の意味が分からずに首を傾げる。
(住む……?どこで?焦凍の家?でも家の人もいるし……)
「静岡に俺のお母さんが昔住んでた家がある。今は病院暮しだからあまり使ってないが…そこで2人で過ごさねぇか……?」