• テキストサイズ

〘轟焦凍R18〙初めての愛を集めて

第9章 *Cultivate love*




「ユイ」


「……!」


少し強めに名前を呼ばれてハッとする。


「ごめんなさい、偉そうな事言って……!」


私の悪い癖だ。個性が暴走している時もそうだが、感傷的になると周りが見えなくなってしまう。

焦凍のお母さんは静かに涙を流していた。


「ごっ、ごめんなさ────「ありがとう」」


謝罪の言葉に感謝の言葉が重ねられる。


「初対面の方にここまで言われるなんて、思ってなかったわ」


「すいません……」


「あっ、誤解しないで?感謝してるの。少し前を向けた気がするわ」


涙を拭ったお母さんは焦凍へ向かって泣きながら笑った。


「いい人と出会えたのね、焦凍」


「……あぁ」


焦凍が少し頬を染めて恥ずかしそうに笑う。


「そろそろ暗くなるから、今日はもう帰って。また来るの待ってるわ」


「はい」


もう少し話していたかったけれど、確かに窓の外も暗くなって来ていたので、今日は帰ることにした。


「今日はありがとうございました」


「楽しかったわ。焦凍の事、宜しくね」


「…………はい…」


宜しくね、と言われたことが嬉しくてつい顔が緩んでしまう。

部屋を出る直前、焦凍が何かを思い出したように声を上げた。


「そう言えば……お母さん」


「何?焦凍」


「静岡にある家、夏休みに1週間だけ借りても良い?」


「あぁ、あの家ね。ずっと使ってないから掃除が必要だと思うけど……それでも良いなら全然使って」


「ありがとう」


(何の話だろう)


「悪い、ユイ。行こう」


「あ、うん……」


少し気にはなったけど、親子の会話に入り込むのもあまり良くないかなと思い、何も聞かなかった。


その日は焦凍に家まで送ってもらって、そこで解散した。


/ 213ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp